さまざまな病気

口・鼻・のど 声のかすれ[嗄声(させい)]


声のかすれは、正式には嗄声(させい)といい、声の音質の異常を意味しています。のどには、食べ物の通り道の咽頭(いんとう)と空気の通り道の喉頭(こうとう)があります。声を出す機能は喉頭の中央部にあるひだ状の声帯が担っています。この声帯に炎症などの異常が起きると声帯の振動に影響が出るため、声がかすれます。

日常生活から考えられる原因

声の出しすぎなどによる声帯の酷使

カラオケなどで歌いすぎて声帯を酷使したり、歌手や教師、アナウンサーやナレーターなど仕事で声帯を酷使した場合、声帯が炎症やむくみを起こし、声がかすれることがあります。

タバコの吸いすぎとお酒の飲みすぎ

タバコの煙に含まれるタールは、気管や気管支を刺激して声帯に炎症を起こします。また、中年以降の喫煙者の中には、声帯がむくんで腫れることによって声がかすれる人が多くみられます。アルコール度数の高いお酒も、のどを刺激して炎症を引き起こすため、声のかすれの原因となります。

加齢による声枯れ

声帯は加齢にともなって変化します。お年寄りの場合、声帯が萎縮し、2枚のひだの間にすき間ができていることが多く、そのすき間から息が漏れ、かすれたような声になります。

疾患による声のかすれ

主な疾患には、風邪やインフルエンザによる喉頭炎、声の使いすぎなどによって声帯に腫れ物ができる声帯ポリープや声帯結節があり、喉頭がんの初期症状としても声のかすれがあらわれます。また、甲状腺の機能が低下する橋本病や、甲状腺がんの場合も声のかすれが起こることがあります。帯状疱疹(帯状ヘルペス)ウイルスによって、声帯の神経に炎症が起きたときも、声のかすれが生じます。

声のかすれ[嗄声(させい)]をともなう疾患

風邪・インフルエンザ

風邪やインフルエンザに感染することによって喉頭に炎症が起きる喉頭炎では、粘膜が赤く腫れ上がってのどの痛みや咳、声がれが起こり、くしゃみや鼻汁、頭痛、発熱、だるさなどの症状をともないます。多くの場合、風邪やインフルエンザが治れば喉頭炎も治ります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。

風邪(感冒) インフルエンザ

橋本病(慢性甲状腺炎・甲状腺機能低下症)

免疫の異常によって、甲状腺に慢性の炎症が起こる疾患です。初期の症状は甲状腺の腫れだけですが、炎症が進み、甲状腺の働きが落ちると甲状腺機能低下症が起こる場合があります。元気がなくなったり、声のかすれ、低血圧、皮膚のカサつき、むくみ、生理不順、記憶力の低下などの症状があらわれることがあります。20歳代後半から40歳代の女性に多く発症します。

声帯ポリープ

声帯の縁に小さな球状の腫れ物ができ、声がかすれて大きな声が出せなくなります。声の使いすぎが原因で、中年の男性や低く大きな声を出す職業の人、カラオケで何曲も歌う人に多くみられます。喉頭炎にかかっていると起こりやすく、ポリープが大きくなると呼吸困難になる場合もあります。

声帯結節

声帯にタコのような小さく硬い突起ができ、声がかすれ、高い声が出にくくなります。声帯ポリープと同様、声の使いすぎが原因で、高い声を出す女性や大声でしゃべる子どもに多くみられます。無理に声を出し続けると結節がしだいに固くなり、手術が必要になります。

喉頭がん

喉頭部に発生したがんが声帯を障害することにより嗄声になります。肺がんや食道がんが周囲に広がって声帯に行く神経を傷害するために嗄声になることがあります。

日常生活でできる予防法

声帯の使いすぎや刺激を避ける

大声を出したり、カラオケなどの歌いすぎを避け、声帯を酷使しないようにしましょう。また、タバコやお酒ものどに刺激を与え、炎症を引き起こすことがありますので、できる限り控えましょう。風邪をひかないように、外出から帰ったらうがいをすることや、室内の乾燥に気をつけることも大切です。

対処法

市販の薬を使う

風邪にともなって声のかすれが起きている場合は、風邪薬や殺菌成分が配合されたトローチ剤、のどスプレーなどが効果的です。

病院で診察を受ける

声帯の炎症は1週間程度で治まるのが一般的です。声を酷使する職業についていて、声のかすれが長引く場合は、耳鼻咽喉科を受診しましょう。また、声のかすれが2週間以上続き、飲み込みにくい感じやのどの異物感などの症状をともなうときや、のど仏の近くに触っても痛くないしこりができたようなときは喉頭がん、甲状腺がんや声帯に行く神経を障害するがんなどの重い疾患が隠れている場合もあります。主治医か耳鼻咽喉科の診察を受けましょう。

声変わりの時期に声帯に起きる変化は?

成人男性の声帯の長さはおよそ17~21mm、女性は12~17mmです。声帯は喉頭をかたちづくる甲状軟骨(のどぼとけ)にくっついていますが、思春期を迎えた男子はこの軟骨が大きくなるとともに、声帯も前後に引っ張られて長くなっていきます。声帯は長いほど振動の回数が減るので声が低くなりますが、声帯が変化する声変わりの時期(変声期)はまだ声帯がうまく振動できないので、無理に大声を出さないほうがいいでしょう。