さまざまな病気

目 痙攣(けいれん)


痙攣とは、自分の意志とは関係なくあらわれる筋肉の動きの一つで、筋肉の収縮が続く状態です。代表的な症状には、まぶたや顔の筋肉がピクピクと動いたり、てんかんの発作による全身の硬直などがありますが、足などの筋肉がつる状態も痙攣に含まれます。多くは、脳や運動神経系の異常によって起こると考えられています。

日常生活から考えられる原因

過度の運動による筋肉の疲労

筋肉は通常、神経の命令によって収縮します。しかし、運動のしすぎで筋肉が疲労すると、命令の伝達に関係している筋肉内のカルシウムやマグネシウムなどのバランスが乱れ、自分の意志とは関係なく突然筋肉が収縮します。足がつることをこむらがえりともいいますが、指や腕、背中や腹筋などにも起こることがあり痛みをともないます。

パソコンなどによる目の酷使や睡眠不足

長時間のパソコン作業や睡眠不足などで目が疲れているときに、まぶたが一時的にピクピクと痙攣することがあります。目の周りの筋肉の疲労あるいは、末梢神経が筋肉のこりやむくみによって圧迫されることで痙攣が起きるのではないかと考えられています。一時的なものの場合は、目を休めたり、十分に睡眠をとることで治ります。

高熱

3カ月から4歳くらいの子どもは、風邪や突発性発疹などで熱が38℃を超えると、高い熱が引き金となって痙攣を起こすことがあります。手足に急に左右対称の激しい痙攣がみられますが、ほとんどは数分以内に治まります。

痙攣の原因となる主な疾患

全身の痙攣を起こす疾患には、てんかんの他に、ウイルス性脳炎や破傷風をはじめとした重い感染症、甲状腺機能低下症になると起きやすい低カルシウム血症、妊娠高血圧症候群、呼吸困難をともなう過換気症候群などがあります。また、局所的に痙攣を起こす疾患には、顔やまぶた、首、肩などにかけてあらわれる片側顔面痙攣、眼瞼(がんけん)痙攣、チック、痙性斜頸(けいせいしゃけい)、字が書けなくなる書痙(しょけい)などがあります。

痙攣(けいれん)を引き起こす疾患

眼瞼(がんけん)痙攣

目の周りを取り囲む眼輪筋が、ピクピクと痙攣を起こす疾患で、40~50歳代の女性に多く発症します。脳のまばたきをつかさどる部分の異常が原因といわれ、目の酷使、ストレス、ドライアイ、先天的な異常などが関係していると考えられています。以前にないまぶしさを感じたり、目がしょぼしょぼしたりまばたきが増えるなどの症状がみられ、重症化すると目が開けられないために物が見えなくなることもあります。

痙性斜頸(けいせいしゃけい)

首の周囲の筋肉に異常な収縮が起こり、首が一定の方向に曲がった状態になる疾患です。脳から筋肉に異常な命令が伝えられることが原因で、ストレスや疲労が関係していると考えられています。初期に首の痛みや肩こりがあらわれ、頭が横に傾いたり、横を向いたり、前か後ろに倒れたり、肩が上がるなどの症状が起こります。同じ姿勢を取り続けるデスクワークの男性に多く発症します。

片側顔面痙攣

顔の片方の目の周り、頬や口もとがピクピク痙攣する疾患です。目の下側から始まることが多く、進行すると一定時間目をつぶってしまったり、顔が引きつってゆがむこともあります。顔の動きをつかさどる顔面神経が、主に動脈硬化によって蛇行した脳の血管によって圧迫されることで起こると考えられています。40~60歳代の女性に多くみられます。

書痙(しょけい)、職業性ジストニー

字を書こうとするときに腕が固まったり、手が震えて字が書けなくなる状態が書痙です。一日中、字を書いている人に多くみられ、字を書く以外の動作では痙攣が起こらないのが特徴です。書痙の他にも、ピアニストなど緊張しながら一定の動作を繰り返す人に起こりやすい痙攣を職業性ジストニーといいます。

チック(トゥレット症候群)

自分ではコントロールできないまばたきを繰り返す、顔をしかめる、首振り、肩のぴくつき、キック、ジャンプなどの運動チックと、咳払い、嬌声、意味不明な言葉を発するなどの音声チックがあります。遺伝的な素因や、脳内の神経伝達物質のアンバランスが関係しているという説があります。主に5~10歳の男子に発症しますが、青年期になると軽くなるケースや自然に治る場合もあります。

三叉(さんさ)神経痛

顔のこめかみから目、あご、頬と三本に枝分かれした三叉神経が支配する領域に起こる痛みを三叉神経痛といいます。多くは、脳に流れる血管がこめかみで神経に触れたり、神経を圧迫したりして起こります。目、あご、頬を中心に、突然ぴりぴりと痛みがあらわれます。その痛みが出る瞬間に顔の筋肉が一瞬収縮し、ピクッと動きます。鋭い痛みが間隔をおいて繰り返すたびに痙攣が起きるため、有痛性チックと呼ばれています。

破傷風(はしょうふう)

土の中の破傷風菌に感染して発病する疾患です。傷から感染すると1~2週間ほどで、首筋がはる、口がこわばって食べ物が飲み込みづらくなる、舌がもつれるなどの症状があらわれます。さらに、筋肉が硬直し、体をのけぞらせる痙攣発作を繰り返して呼吸困難に陥り、死亡することもあります。錆びた刃物の切り傷や、細菌に汚染されたどぶ川のようなところでけがをしたときは破傷風感染の恐れがあるので、注意が必要です。

てんかん

代表的な症状は大発作と呼ばれ、突然意識がなくなり、全身の筋肉が緊張して棒のようになり、続いて体が大きくふるえます。その後、全身の力が抜けて睡眠期に入り、多くは数分から数十分で目が覚めます。脳の神経細胞の伝達システムに一時的な異常が発生して引き起こされるといわれ、原因が不明なてんかんと、脳腫瘍や脳外傷、脳血管障害などの疾患が原因となる症候性てんかんがあります。

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てんかん(全身)

妊娠高血圧症候群

妊娠中毒症と呼ばれていた疾患で、むくみ、高血圧、たんぱく尿が特徴です。妊娠後期に起こることが多く、胎児の発育障害や脳出血などを引き起こすことがあって、母子ともに危険な状態になる場合があります。重症の場合は、全身の痙攣発作と昏睡をともなうことがあり、発作の前ぶれとして目のちらつきや吐き気、頭痛、めまいなどがあらわれます。

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血圧が高めである

脳疾患(脳腫瘍、脳梗塞)

脳の組織に腫瘍ができると頭の一部に鈍痛や重さを感じ、嘔吐や手足の痙攣があらわれます。また、脳梗塞は脳の血管に血液の塊が詰まることによって脳の組織が破壊される疾患ですが、脳梗塞を起こしたことのある人が立ち上がって足を踏み出そうとするときに、足首や膝がガクガクふるえることがあります。

日常生活でできる予防法

準備運動やマッサージを行い、ミネラルを補給する

急に運動を開始したときや、立ち仕事の場合には足がつりやすくなります。スポーツなどを始める前にはウォーミングアップをして筋肉を温め、終了後や帰宅後はマッサージ、ストレッチ、入浴などで筋肉の疲労を取り除きましょう。また、カルシウムの多い牛乳や緑黄色野菜、マグネシウムの多いアーモンドや大豆、貝類などを積極的にとりましょう。

目を休め,室内の乾燥を防ぐ

長時間にわたって目を酷使するときは、1時間ごとに約15分は目を休めましょう。目の疲れをとるマッサージをしたり、蒸しタオルをまぶたにのせて目の周りの筋肉を温めると効果的です。また、目が乾燥しないように、加湿器などで室内の湿度を調節しましょう。目の健康に良いとされる、ビタミンA、C、E、B群をとることも大切です。

ストレスを溜めない、生活習慣を見直す

痙攣の多くはストレスが引き金になったり、悪化の要因になったりすると考えられるため、趣味を見つけるなどストレスを上手に発散することが大切です。また、動脈硬化を防ぐことが片側顔面痙攣の予防に繋がります。脂っぽい食事を避ける適度な運動を習慣づけるなど、生活習慣を見直しましょう。

対処法

病院で診察を受ける

全身的な痙攣は、脳の病気や内臓の重い病気で起こる場合もありますので、発作がおさまっても早期に内科や神経内科あるいは脳外科を受診しましょう。また、足などの筋肉がつる症状が繰り返し起こる場合、疾患が隠れていることがありますので、早めに検査を受けましょう。

子どもは痙攣を起こしやすい

子どもは発熱とともに起こる熱性痙攣の他、憤怒(ふんぬ)痙攣といって激しく泣いたときに呼吸が止まり、顔が紫色(チアノーゼ色)または蒼白になって痙攣を起こすことがあります。これは泣き入りひきつけとも呼ばれ、脳が酸素不足になることで起こります。子どもがよく痙攣を起こすのは脳が未熟なためと考えられ、多くの場合、4~5歳をすぎると自然に起こらなくなります。