さまざまな病気

全身 骨折


骨が折れたり、砕ける骨折は、主に骨に強い力や衝撃が加わったときに起こります。しかし、中には骨がもろくなっていて軽い衝撃で起こる圧迫骨折や粉砕骨折、弱い力が継続的に加わることによる疲労骨折などもあります。

日常生活から考えられる原因

外側からの強い圧力

骨折の多くは外傷によるものです。平地での転倒、低い場所からの転落、軽い衝突など、比較的弱い力による外傷では骨折も軽度で済む場合がありますが、高いところからの落下や自動車事故など、強い力による外傷では複数の箇所に重度の骨折が生じることもあります。

疲労の蓄積

金属は一時的な弱い力を加えるだけでは変形しませんが、繰り返し同じ力が加わると変形したり、折れてしまうことがあります。骨もそれと同様に、弱い力を継続的に加えることで徐々に骨が疲弊し、小さなひび割れができます。さらに弱い力を加え続けると、小さなひび割れが大きいひびとなり、骨折を引き起こすことがあります。これがスポーツマンなどに起こる疲労骨折です。

骨折の原因となる主な疾患

骨粗しょう症は、骨がスカスカになるために日常の動作でも脊椎や太ももの骨を骨折することがあります。また、骨そのものに悪性腫瘍ができたり、がんなどによって他の場所から悪性腫瘍が転移することで起こる転移性悪性骨腫瘍では、腫瘍によって骨が弱くなり、骨折しやすくなります。

骨折の症状と種類

骨折は種類によって症状もさまざま

骨折した患部を動かしたり体重をかけると強い痛みがあり、そのうちに患部の周辺が赤く腫れあがるものから、患部が不自然な形に変形したり、曲がらない方向に曲がるようなこともあります。皮膚の下で骨折したときは内出血が起こりますが、折れた骨が皮膚を突き破ると、激しい出血が起こり、顔面蒼白になってショック症状を引き起こすこともあります。 全身 骨折皮下骨折…皮膚の下で骨折し、皮膚に損傷がない状態です。内出血によるあざができることが多く、最初は黒ずんだ紫色のあざができて、その後黄色や緑色に変色していきます。 全身 骨折開放骨折(複雑骨折)…患部の皮膚が破れて、激しい出血が起こります。傷口が細菌などで汚染されやすいので、一刻も早い治療が必要になります。 全身 骨折剥離(はくり)骨折…腱や靭帯の結合部分から小さな骨がはがれた状態で、手、足、足首に起こりやすい骨折です。 全身 骨折関節骨折…関節に起こる骨折で、多くは足首や肘に起こります。これらの部位は皮膚のすぐ下に骨があるため、開放骨折になることも少なくありません。 全身 骨折疲労骨折…スポーツなどで特定の部位に負荷をかけ続けていることで骨が弱くなり、骨折を起こします。とくに多いのは足や腰の骨折で、陸上選手やサッカー選手などによくみられます。 全身 骨折圧迫骨折…腰椎や脊椎に起こりやすい骨折で、骨がつぶれた状態です。骨粗しょう症のお年寄りは、体の重みだけで、気付かないうちに腰椎(ようつい)や脊椎(せきつい)に圧迫骨折を起こす場合があります。 全身 骨折粉砕骨折…骨がバラバラに砕ける骨折です。事故などで大きな衝撃が骨に加わることや、骨粗しょう症で骨が弱くなった人が転んだときなどに起こります。

骨折を引き起こす疾患

骨粗しょう症

骨量が減少して、骨がスカスカの状態で、日常のささいな動きで小さな骨折を起こしやすくなったり、自分の体重が支えきれず圧迫骨折を起こしたりする疾患です。脊椎が変形して、動作のたびに痛みが起こり、ひどいときには立ったり座ったりすることができなくなります。

転移性悪性骨腫瘍

骨に起こる悪性腫瘍のことで、骨そのものに悪性腫瘍ができる場合と、他の部分に生じたがんが骨に転移して起こる場合があります。初期は運動したときや歩いたときにだけ患部が痛みますが、進行すると安静にしていても痛みを感じるようになります。腫瘍ができた部分の骨がもろくなって軽い衝撃で骨折したり、腫瘍が神経を圧迫して手足のしびれが起こることもあります。

日常生活でできる予防法

適度な運動を行う

お年寄りは、適度な運動を行って筋力や柔軟性を高めることで転倒による骨折や骨粗しょう症を予防できるといわれています。ウォーキングやラジオ体操、柔軟運動などの簡単なものでかまいませんので、運動の習慣をつけるように心がけましょう。

カルシウムとビタミンDを積極的にとる

骨の材料となるカルシウム、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを積極的にとることで骨を健康に保つことは骨折の予防に効果的です。カルシウムはいわしや牛乳に、ビタミンDは卵やまぐろに多く含まれています。

対処法

応急処置を行い、すぐに医療機関を受診する

骨折したときは、ライス(RICE)と呼ばれる4つの応急処置をするのが基本です。応急処置後は病院で診察を受けましょう。 骨折した部位を動かさないようにして、腕では三角巾や代わりのタオルなどで吊り、足では松葉杖を使うなどして荷重がかからないようにします。 骨折部位を中心に少し広めの範囲を氷を入れたビニール袋や冷却パックで冷やし、炎症を抑え痛みを緩和します。15~20分が目安で、これ以上続けて冷やすのは避けましょう。再び痛むようなときは救急処置だけでなくその後も断続的に続けます。 腫れや内出血を防ぐために、伸縮性のある弾力包帯やテーピングで、骨折部位を適度に圧迫しながら巻いて固定します。強く巻きすぎると局部的に血流が低下することがあるので注意が必要です。 骨折した部位を心臓より高い位置に保つことで、内出血を防ぎ痛みを抑えます。椅子やクッションなど手軽な高さのものを利用しましょう。
(1)安静(Rest)にする。
(2)冷却(Ice)する。
(3)圧迫(Compression)する。
(4)高く(Elevation)挙げる。

病院で診察を受ける

骨折が疑われる場合には、整形外科を受診する必要があります。足や股関節を骨折して動けないようなときや、激しい出血をともなうときはただちに救急車を呼び、適切な処置を受けましょう。

骨折は捻挫よりも治る経過がいい

骨折と捻挫を比べると骨折の方が重症だと思いがちです。しかし、場合によってはむしろ逆なのです。皮膚の損傷がない骨折は、ギプスで固定して付着すればしっかりと安定し、障害が残らないことが多いのですが、足首の捻挫は、重症度によってはギプスで固定しても関節がグラグラと不安定な状態が続きます。このような重症度の高い捻挫では関節のぐらつきや腫れ、痛みが後々まで続き、さらには足の関節がすり減って変形し、日常の動作に長期間支障が出ることもあります。