さまざまな病気

皮膚(全身) 皮膚のかゆみ


肌をかくとかゆみ受容器に伝わった刺激の一部が末端の神経に伝わり、かゆみ物質のヒスタミンなどを放出する細胞を刺激するため、かけばかくほどかゆみが増す現象を起こすと考えられています。かゆみを引き起こす刺激は、食べ物や衣服、加齢や室温、湿度などさまざまなものがあります。

日常生活から考えられる原因

特殊な肌タイプ

皮膚のバリア機能が低下しやすい乾燥肌や、バリア機能が常に低下した状態の敏感肌は、刺激物質に影響されやすいものです。髪の毛先が顔に触れたり、下着による皮膚の圧迫などのちょっとした刺激でもかゆみが起こることがあります。

加齢による皮膚の乾燥

年齢が上がると、皮膚の老化によって皮脂腺や汗腺の働きが低下し、皮膚の保湿力が失われて乾燥しやすくなります。とくに更年期以降は女性ホルモンの減少によって皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみを感じることが多くなります。男性も60歳代後半くらいから男性ホルモンの減少によって、皮脂線の働きが低下するために皮膚が乾燥しやすくなります。

高温多湿や低温乾燥の環境

高温多湿の環境は汗が出やすくなります。汗の量が増えていくと、皮膚にある汗の通り道や出口が詰まり、汗が体の外に排出されず周辺の組織を刺激してかゆみや炎症反応が起きることがあります。逆に、冬の低温乾燥の環境は、皮膚から皮脂や水分を奪い、かゆみを引き起こします。高齢者の皮膚のかゆみの、最も多い原因といわれています。

虫さされ

蚊(か)、ノミ、ダニ、ブユ(地域によってはブヨ、ブト)、ケムシなどの昆虫に皮膚を刺され、毒性のある物質が体の中に入ることで、腫れやかゆみが起きます。

薬の副作用

飲んだり注射した薬や塗り薬によって、かゆみが起きることがあります(薬疹)。多くは薬物に対するアレルギー反応と考えられています。

皮膚のかゆみの原因となる疾患

ハウスダストや食べ物などのアレルギーが原因となるアトピー性皮膚炎、刺激の強い物や特定の物質に触れることで起こる接触性皮膚炎があります。食べ物や薬、植物が原因となるじんましん、白癬菌による感染で起こる水虫や白癬症、汗による皮膚への刺激が原因となるあせも、ストレスなどが誘因となる乾癬なども皮膚のかゆみの原因となります。これらの疾患と違って、皮膚の乾燥や炎症がみられないのに、皮膚がかゆい場合は内臓の疾患などが原因で起こる皮膚そう痒症が疑われます。

皮膚のかゆみをともなう疾患

アトピー性皮膚炎

ハウスダストや食べ物などの原因物質によって引き起こされるアレルギー疾患です。乳幼児期では、顔や頭、耳などの皮膚がジクジクして赤く腫れ、小児期以降では皮膚がカサカサに乾き、硬くなります。強いかゆみをともなうため、かくことで細菌に感染して悪化することがあります。思春期ごろに治まる人が多いのですが、成人以降も続くと慢性化することがあります。

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アトピー性皮膚炎

接触性皮膚炎(かぶれ)

特定の物質に触れたことで起こる皮膚炎のことです。赤ちゃんのいる家庭では一番身近なのが、オムツかぶれです。これは尿や便のアンモニアが原因となる刺激性接触性皮膚炎で、触れてから数時間後に炎症を起こします。その他、油や洗剤、石鹸などでも起こる場合があります。これとは別に、アレルギー物質に触れることで炎症を起こすアレルギー性皮膚炎があります。貴金属や化粧品、うるしやぎんなんなどに触れることで、接触しなかった部位も含めて皮膚が赤くなり、ブツブツや水疱ができたりするもので、かゆみの強いものと、ないものがあります。

じんましん

食べ物をはじめ、薬や植物などが原因として挙げられています。その食物を食べたり、植物に触れたりすることで皮膚が反応して赤く盛り上がり、強いかゆみをともないます。皮膚の赤い盛り上がりは直径数ミリのものから、広範囲の地図状に広がるものまであり、ほとんどの場合数分から数時間で消え、しばらく時間をおいてからまたあらわれることがあります。

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じんましん

水虫・白癬症

カビの一種である白癬菌が足の裏や手について感染すると水虫、体の表面や頭皮などに入りこみ感染すると白癬症と呼ばれます。とくにかゆみが強いのは、足の裏と体の感染です。足の裏では小さな水泡ができたり、指と指の間が赤くなり、皮がむけ白くふやけます。体では赤いブツブツや赤い輪があらわれることが多く、いずれも激しいかゆみをともないます。

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水虫

あせも

汗腺の出口が詰まり、汗腺の出口とその周辺に汗が溜まって起きる炎症です。多くは赤みを帯びた小さな発疹ができます。汗をかきやすい額やわきの下、ひじや膝の裏側に多くみられます。汗をかきやすい夏はもちろん、熱すぎる暖房や厚着などによって、冬にもみられます。乳幼児に多い疾患ですが、大人にもできることがあります。

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あせも

乾癬

境界がはっきりした赤い発疹と、発疹の表面にフケのようなかさぶたがつき、かゆいのが特徴です。発疹は頭部からでき始めることが多く、徐々にひじ、膝、腰など皮膚がこすれやすい部分に広がり、膿みを持ったり関節痛などの症状が出ることもあります。遺伝や免疫機能の低下などが関係し、ストレスや内臓の障害などが引き金となって発症するのではないかと考えられています。

皮膚そう痒症(ひふそうようしょう)

皮膚病や肌の乾燥がないにも関わらず、皮膚がかゆくなる疾患です。肌の一部がかゆくなる限局性と、全身がかゆくなる全身性の2つに分けられます。限局性皮膚そう痒症は、前立腺肥大や毛じらみ症、カンジダ膣炎、ギョウ虫症などが原因になります。全身性皮膚そう痒症は、糖尿病や慢性腎不全、甲状腺機能亢進症や低下症、更年期障害などが原因として挙げられる他、精神的なストレスが原因になっている場合もあります。

日常生活でできる予防法

乾燥を防ぐ

かゆみの原因となる肌の乾燥を防ぐには、まず加湿器や濡れタオルなどで部屋を乾燥させないように気をつけ、エアコンを使いすぎないことが大切です。肌に優しい石けん類を使うことや熱いお湯は避けて、40℃以下のぬるめのお湯に長めにつかり、洗顔・入浴後のスキンケアをしっかりと行いましょう。コラーゲンやヒアルロン酸、セラミドなどの保湿成分が入っているものがおすすめです。そして紫外線対策などを心がけ、肌を乾燥から守りましょう。

洗濯物のすすぎ、脱水をしっかりと行う

洗濯物に残されたわずかな洗剤に肌が反応し、かゆみが出ることがあります。すすぎ、脱水をしっかりと行いましょう。

食物アレルギーの制限を行う

食物アレルギーであることがはっきりしている場合は原因となる食品を制限しますが、素人判断で食事制限をすると、成長期では必要な栄養素やカロリーが不足するおそれがあります。医師の指示に従うようにしましょう。また、外食などでは、避けるべきアレルギーの原因物質が入っていないと思われるメニューでも、同じ器具を使って調理されていると、その成分が器具に残っていることがあります。不安な要素があればお店の人に確認しましょう。

アレルギーの原因を避ける

特定の薬品や金属など、アレルギーの原因となる物質がわかっているときは、その物質を避けるようにしましょう。

対処法

かかずに冷やす

かくことによって皮膚のバリア機能が壊れ、細菌やアレルギー原因物質が入りやすくなります。かくとさらにかゆみが増すばかりか、皮膚が傷つき化膿することもありますので、かかないことが大切です。かゆみが強いときは、冷やすと楽になります。冷たいおしぼりか、氷を入れたビニール袋や保冷剤をハンカチなどでくるんで、かゆいところに当てましょう。

市販の薬を使う

乾燥によるかゆみがあらわれたら、グリセリン、セラミド、コラーゲン、ヒアルロン酸、尿素などの保湿成分の入った市販の軟膏やクリームを使いましょう。湿疹があらわれたときは、自己判断で薬を使うと悪化するおそれもありますので、必ず薬局で相談し、適切な薬を確認しましょう。水虫には白癬菌を破壊するブテナフィン塩酸塩配合の薬が効果的です。水虫の薬は、毎日欠かさず、かゆみや赤みのある患部よりも広く薄く塗ることがポイントです。

病院で診察を受ける

かゆみが長い期間治まらない場合や我慢できないほど強いようなときは、主治医に相談するか皮膚科で診察を受けましょう。

皮膚炎外用薬の塗り方のコツ

かゆみなど炎症を起こしている皮膚はとても敏感です。皮膚に薬をしっかり浸透させたいからといって、強くすり込んでは逆効果。無理にすり込まなくても薬は自然に吸収されます。塗るときは手を清潔にし、指の腹でそっと塗り広げましょう。人差し指ではなく、中指や薬指を使うと力が抜けてちょうど良い力加減になります。