さまざまな病気

小児 ひきつけ


ひきつけとは自分の意思とは無関係に、突然手や足が突っ張り、全身を硬直させる状態のことをいいます。ひきつけはけいれんと同じ意味で使われていますが、一般的には小児のけいれんに使う場合が多くなっています。脳の神経細胞が異常に興奮した場合や、脳になんらかの異常がある場合などに起こると考えられています。脳が未発達な乳幼児期は、最もひきつけを起こしやすい時期です。

日常生活から考えられる原因

乳幼児の大泣きによるひきつけ

乳幼児は激しく泣くと呼吸が苦しくなり、突然、呼吸が止まったり、顔色が紫色になって全身が突っ張ることがあります。これは呼吸の仕方が未熟なために、大泣きをするとうまく呼吸ができないことによるものです。

激しい脱水症状によるひきつけ

乳幼児は大人に比べて体の水分の割合が非常に高いため、何度も吐いたり、下痢をしたりすると脱水症状を起こします。唇がカサカサになったり、元気がなくなるなどの症状があらわれますが、さらに脱水が進み、体重の10%以上の水分が失われると、意識がはっきりしなくなり、ひきつけを起こすこともあります。

高熱によるひきつけ

乳幼児は脳の発達が未熟なために、急な発熱や39℃以上の高熱によって神経細胞が興奮するとひきつけを起こすことがあります。ほとんどの場合、生後6カ月から4歳ごろまでに発症し、成長とともに自然と発作を起こさなくなります。

ひきつけを引き起こす疾患

乳幼児にとくに多いのが、熱が上がるときにあらわれる熱性けいれんや、大泣きしたときに起こる泣き入りひきつけです。熱がないのにくり返しひきつけを起こす場合は、てんかんの可能性があります。また、ウィルスや菌に感染して脳炎や髄膜炎を起こすと、高熱や嘔吐があらわれ、ひきつけが5分以上続いたり、その後ぐったりして意識障害を起こすなどの症状があらわれます。インフルエンザによる脳炎では、死亡することも少なくありません。

ひきつけをともなう疾患

熱性けいれん

熱が上がり始めるときや、体温が39~40℃に達するときに起こるひきつけです。乳幼児は脳が未熟なため、発熱という刺激が誘因となります。両手足を突っ張り、全身の筋肉が硬直して、手足がガクガクと震え、顔が青くなり、白目をむいたりしますが、発作は数十秒から5分程度でおさまります。生後6カ月から6歳までに発症することがほとんどで、年齢とともに起こらなくなってきます。

泣き入りひきつけ

乳幼児が激しく泣いたときに、脳の呼吸をつかさどる部分の働きが一時的に低下することで起こるひきつけです。思いどおりにならなかったり、注射針を刺されたときなど、怒りや恐怖、痛みを感じたときに多くみられます。呼吸が止まり、顔や唇が紫色になり、全身が硬直しますが、発作は1分以内におさまります。心配のないひきつけで、成長するにつれて起こらなくなります。

てんかん

熱がないのにくり返しひきつけを起こす疾患です。脳の神経細胞がなんらかの刺激で興奮することによって起こります。突然、意識がなくなって、全身の筋肉が硬直して棒のようになり、白目をむいて体が大きく震えたり、口から泡のようなよだれを吹いたりします。このような大発作は数分でおさまり、その後、睡眠状態になります。この他、急に動作が止まり、数秒間、ボーッとするような発作や、うなずくような動きをくり返す発作が起こる場合もあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。

てんかん(小児)

脳炎

脳細胞に、はしかやインフルエンザなどのウイルスや細菌が感染したり、寄生虫などが寄生することで起こります。ひきつけや手足の麻痺、錯乱や妄想などの精神症状を起こし、進行すると昏睡に陥ることもあります。脳炎は髄膜炎よりも症状が重く、髄膜炎を合併することも少なくありません。

髄膜炎

脳と脊髄を包む脳脊髄という膜に細菌やウイルス、真菌などが感染して起こる疾患です。髄膜炎では、急に高熱を発し、強い頭痛や嘔吐、首のすじが張るなどの症状のほか、悪化するとひきつけや意識障害、昏睡を起こすことがあります。

日常生活でできる予防法

泣き入りひきつけは気分転換で防ぐ

乳幼児が激しく泣き出したときは、抱いて別の場所に移動したり、おもちゃや絵本など好きなものを見せたりして、気分を切り替えてあげましょう。また、一人で寝かせると不安から泣き入りひきつけを起こしやすくなりますので、添い寝をしてあげることも必要です。

栄養バランス、こまめな水分補給を心がける

栄養状態を整えておくことは、ウイルスや細菌に対しての抵抗力を養うことになります。たんぱく質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミンの栄養素をバランス良く組み合わせた食事をとるように心がけましょう。また、体内の水分の割合が高い小児、とくに乳幼児は脱水状態になりやすいので、こまめな水分補給も大切です。

ワクチンを接種する

はしか、百日咳、インフルエンザ、肺炎球菌などのワクチンを接種することで、ウイルスや細菌感染の予防ができます。また、感染しても軽い症状ですみ、合併症といった重篤化の予防にも繋がります。

対処法

平らな場所に寝かせ、衣服をゆるめる

赤ちゃんがひきつけを起こしたときは、体を揺すったりせずに、平らな場所に寝かせて顔を横向きにして、衣類やおむつをゆるめてあげましょう。頭にピン留めなどをつけている場合は、そっと外しましょう。また、ひきつけを起こしたときに赤ちゃんがぶつかって怪我をしないように、周囲を片づけることも大切です。

5分以上続く場合は救急車を呼ぶ

発作の時間を落ち着いて計りましょう。ひきつけの発作はほとんどが数十秒から3分以内でおさまりますが、5分以上続く場合は脳炎など危険な疾患の可能性もあります。片方の手足だけにひきつけがみられる、目が一方に寄っている、意識がはっきりしない、体の動きがおかしい、発作を繰り返し起こすなどの症状があるときには救急車を手配しましょう。もし迷う場合は電話で「救急相談センター(♯7119)」に連絡し、相談してから手配することもできます。

病院で診察を受ける

初めて3分以内のひきつけを起こした場合、発作がおさまった後に、発熱や手足の麻痺など何らかの症状がみられるときには落ち着いてから小児科を受診しましょう。また、1年に2回以上熱性けいれんを起こす場合はてんかんなどの疾患が隠れていることがあります。できるだけ早くかかりつけの小児科を受診しましょう。

ひきつけを起こしても、あわてずに!

赤ちゃんがひきつけを起こすと、お母さんがパニックになってしまいがちですが、すぐに命に関わることはめったにありません。まずは落ち着いて赤ちゃんを平らで安全な場所に寝かせ、吐いたものがのどに詰まらないように、顔を横向きにしましょう。時計を見て、時間のチェックも忘れずに。次に衣服をゆるめ、胸やお腹をさわって熱があるか調べましょう。舌をかまないようにとタオルや箸をかませたりするのはかえって危険です。あわてずに、ひきつけの最中やひきつけた後の状態を観察することが大切です。